茶人に非ず

いつものお寺参りに、婚約の報告をしに行ってきました。それはさておき、隣接してあったお茶席でのこと。
御詰めの席の並びに足の悪い方様に机と椅子が準備されてるお茶席でした。基本、お参りに来た人、誰でもがいただけるお茶で、茶道やってる人専用のお茶席ではないのです。ここがミソ。
で、少々かじってる私は、正客の席は空いていたのだけどもおこがましいし、座ってはる並びの一番末席に座りました。ただし、一人、椅子席に座っていらっしゃったので、その人の分を空けたとなりの前の畳に座ったつもりでした。でした。でーしーたー!
(して、しばらくして正客の席もいつのまにか埋まりました。)
ほなら、
お茶を運んできてくれはった(炉はあったけれどお点前はすでに終わってた)’先生’っぽ人が、思いっきり大きな声で、私に
「まぁまぁそこに座ってもらうと椅子席の方に運びにくくなるので、他のところに座って頂戴」
と。
まぁ、私も運び手さんの’都合’まで考えなかったから落ち度はありますが、その後
「みなさん、ご存知ないのでしょうけど、お茶席に入られたら、まず、お茶席の様子を伺ってから、どちらに座れば良いか、考えて、座られたらよろしいのでございますよー。」
と、”さも、私はお茶の先生でございますー。みなさん、常識知らずの方が多いようで”みたいなー。
私は、汗をかきつつ、すみませんと謝りながら、そのお茶席を離れ隣の部屋へ移動しました。当然でしょう。
すると、逆にお茶席に座ってはった素人さんが気を遣ってくださって、まぁまぁこちらにこちらにとすすめてくださいました。
でも、すでに畳のふちの上を座らなければならないほどの混み様になっており、遠慮しつつ、先のお客さんが退席されるのを待って、席に入りました。


茶人として客に恥をかかすなんて最悪です。


どれだけお茶の先生としてお点前、知識が豊富で尊敬するに値する方か知りませんが、亭主として客におもてなしをする心意気、最悪でございました。裏千家のお点前と拝見しております。
お菓子をいただき、お茶をいただき、おそらく私の茶碗の持ち方で茶道をやってるのはわからはったと思います。一年もやれば何もしらない方より茶碗の持ち方ははっきりとわかるぐらい違うと思います。
茶碗を片付ける時に、「さきほどは、いろいろ言ってごめんなさいね。」と言っていただけました。私なりに考えて選んだ場所だったということを、後になってわかってもらえたんやろか、とちょっとは安堵しましたけれども。あそこで反論なんてことも見苦しいので、反論しませんでしたが、ずっと悔しい恥ずかしい思いでした。で、嫌味十分に、
「いえ、勉強させていただきました。」とお返しさせていただきました。


茶道をすると、自分がマナーを教えなければならないという妙な意識が出てくるのかもしれませんが、得意になって客を注意するのは大きく失礼きわまりないことだと思います。私がのくべきところに座っているならば、「こちらのほうへどうぞ」とか移動を促すような言葉でもって動かせばよいのです。そのほうがスマートです。私が恥をかいただけでなく、他のお客さまにもお茶席でのマナーに落ち度はないかと緊張なされました。お茶は一服するもの。客が緊張して疲れてどうしてそれがお茶なのでしょうか。
お茶の先生は、こういう点を気をつけていただきたいと思います。だから、茶道をしたいと思わなかったんですよ、私は。マナーを知るもののみのお遊びではございません。
宇治に住んで、宇治のお茶屋さんと交流して、抹茶がどれほど丁寧に作られ、吟味され有り難いものか、そしてそれをお客さんに自分の一番無垢な精神状態でお出ししておもてなしをする、それを極めることが茶道だと私は学びました。
自分のおごりを0にして、どんな方にでもお茶を楽しんでいただくというのは、本当に難しいことです。
お茶の先生が、これを忘れはるなんて。こんな先生にはつきたくないものです。


そして、私はこれを反面教師として精進していきたいと固く誓うのでした。